はじめに
今回は、自宅で気軽にお茶をたてて楽しむ「盆点前」をご紹介します。
「盆点前」という特別な体験をすることで、ひととき、日常の慌ただしさから自分を切り離すことができます。
日常の中に「盆点前」という特別な体験ができる場を作ってお茶を楽しんでください。
■茶道で重んじられる「独服」
茶室は恵まれた人しか持つことができません。茶道家は、出来るだけたくさんの人に茶室の空間を体験していただきたいと考えています。
しかし、茶室の数が限られているうえ、茶会に招待してもらえる機会は皆無といってもいいのではないでしょうか。
「盆点前」ならば、お盆の上が即席のお茶室になります。お盆があれば、日常の中に「盆点前」という特別な体験をする場が作り出せます。
静寂の中で自分と向きあうこと、それが茶道で重んじられている「独服」です。
茶道家は、「自分の内面をつくりあげてから客人をもてなすものだ」とよくいわれます。自分の内面をつくりあげるために、茶道家は一人で茶をたてて静かに飲む「独服」の時間を大切にしています。
「独服」は、自分の中に静謐をたくわえて、お客様を気持ち良くおもてなしするための修練の一つです。
■「盆点前」のために用意するもの
・盆
盆は小ぶりのものでかまいません。漆塗りのものや白木のものなど、好みのお盆を使ってください。
・茶碗
千利休の時代に珍重された「井戸茶碗」は、朝鮮の庶民がご飯茶碗として使用していたものです。ぞんざいに扱われてそのまま井戸に捨てられ、長い年月の間に風合いが増したものを、茶人が「井戸茶碗」と呼んで茶器に見立てました。ですから、抹茶茶碗でなくても、お気に入りのご飯茶碗やカフェオレボウルなどでもかまいません。
・棗
棗はお抹茶の粉末を入れる容器です。漆塗りは高価ですが、お茶と長く付き合うのでしたら一つ持っておくと良いでしょう。
・茶筅、茶杓、袱紗、茶巾
茶筅は2千円ほどで販売されています。袱紗も2千円から3千円程度。茶杓は千円ほどです。茶巾は5枚ほどのセットが数百円程度で購入できます。
・ポット
本来は炉や風炉などの茶釜を使用しますが、「盆点前」の場合はポットの方が便利です。
■「盆点前」の流れ
「盆点前」も「平点前」と動作は同じなのでシンプルでわかりやすい「石州流 伊佐派 平点前のやり方」を参考にしながら作法を学びましょう。
①盆に茶碗、茶筅、茶巾、茶杓、棗をセットしてテーブルに置きます。
②袱紗さばきをして棗を左手に持ち、棗の蓋を袱紗で拭きます。
③また袱紗さばきをして、茶杓を拭きます。
④茶筅通しを行います。本来は茶釜から湯を注ぎますが盆点前ではポットを使用します。茶筅通しは、茶筅の糸がほどけたり先端が痛んだりしていないか、また、器にひびなどが入っていないかを確かめるために行います。
⑤お茶をたてます。右手で茶杓をとって、左手で棗を持ち、茶杓を持つ右手で棗の蓋をとり、抹茶を茶碗にすくい取ります。
客は、亭主がお茶をたてているあいだにお菓子をいただきます。「独服」の場合は、お菓子がなくてもかまいません。
⑦お茶を飲み終わったら、茶碗にポットからお湯を注いで、茶筅通しをして、建水に捨て、茶巾で拭いて、茶巾を茶碗にそのままにして、その上に茶筅を乗せておきます。
⑧袱紗さばきをして、茶杓を拭いて茶碗に乗せて、お盆を片付けます。
まとめ
この映像は、有名な「玉子かけご飯」の動画です。想像の域を出ませんが、おそらくお茶の心得のある人が撮影した動画ではないでしょうか。
私たちが、お茶を飲んだり食事をしたり、日常的な動作を美しく磨いていこうとする姿勢は、茶道に由来しているのかもしれません。