はじめに
茶懐石とは、正式なお茶会で提供される料理のことです。飯後の茶事など、食事時を避けて催されるお茶会ではお菓子だけが提供されますが、「正午の茶事」や「朝の茶事」、「夜咄し(よばなし)」といったお茶会では懐石が提供されます。今回は、懐石を提供する段取りについて解説していきます。
■茶懐石の流れ
茶懐石の流れについて、代表的な「正午の茶事」を例にとってご紹介していきます。
①飯、汁、向付の膳
茶室に入り席についたら、最初のお膳が提供されます。
このお膳には炊きたての柔らかいご飯が少しだけ盛られ、汁の量も少なめです。向付には刺身などが盛られ、お酒が出るまで手を付けないのが一般的です。
ご飯は後の湯漬けのために一口だけ残しておきます。汁はすべて飲み切ります。
②お酒
客が汁を飲みきったら、亭主はお銚子と盃台を運び、酒を注いでいきます。
③煮物の膳
煮物の膳は、茶懐石のいわばメインディッシュにあたります。大きめのお椀に煮物を盛って提供します。
④焼物の膳
焼物は大きめの鉢に人数分の料理が盛られて提供されます。大きめの鉢を客が手渡ししながら「引菜」とう方法で料理を取り分けます。
給仕を置かずに「引菜」によって客がめいめいに取り分けることで、茶室の中の平等な空気をそこねないように工夫されています。
「引菜」は千利休から引き継がれている取り分け方法です。
⑤預け鉢
古い茶事の記録には「肴」という記述がみられます。「預け鉢」は流派によって「進肴(すすめざかな)」や「追肴(おいざかな)」、「強肴(しいざかな)」など呼び方が異なります。八寸の後、お酒を進めるために出す肴を「強肴」と呼ぶこともあります。
⑥吸物
亭主はころあいを見はからって吸物椀を運びます。吸物を食べ終わたった盃事に移行します。吸物椀の蓋で八寸の肴を受けることがあります。
⑦八寸
酒の肴として珍味が2品から3品提供されます。八寸には、海の幸と山の幸をバランス良く盛り込みます。
亭主は1人ずつ、客の盃に酒を注ぎながら、八寸の肴を吸物椀の蓋に取り分けていきます。
酒と肴が末客まで行き渡ったら、亭主は正客の元へ戻って、「お流れを」と告げて、盃に酒を所望します。
盃は正客から亭主へ、亭主から次客へ互いに酒を注ぎ合いながら渡っていきます。
⑧湯桶
盃を返したら、湯桶(ゆとう)と香の物が提供されます。湯桶には、「湯の子」と呼ばれる「おこげ」が入っていて、湯の子すくいで、飯椀と汁椀に入れて湯を注ぎます。
飯椀に少し残しておいたご飯にも湯を注いで湯漬けをします。
香の物でお椀をキレイにぬぐって食べ、お湯を全部飲みます。禅寺の食事作法が由来になっているといわれています。
まとめ
今回は、懐石料理の段取りや流れについてご紹介しました。料亭などでも強肴とか八寸という名目で料理が次々に提供されることがあります。その場合も、茶事の懐石が基本になっています。ちなみに、朝茶の場合は、生魚などを避けて、焼物などもはぶいた一汁二菜が提供されます。