はじめに
名茶室を見に行くシリーズ、今回は桂離宮をご紹介します。茶室や歴史的建造物に興味がない人でも一度くらいは「桂離宮」の名を聞いたことがあるのではないでしょうか。
江戸時代初期の優雅な宮廷文化を今に伝える建築群とそれを取り囲む回遊式の庭園。シンプルさの中に深い精神性をそなえた建築様式は、ブルーノ・タウトやヴァルター・グロピウスといった近代建築の巨匠たちからも高く評価されています。
■四季をあじわうために設けられた4つのお茶室
桂離宮には、代表格の「松琴亭」をはじめ、「賞花亭」、夏の涼を楽しむためのお茶室「笑意軒」、秋にお月見を楽しむ「月波桜」の4つのお茶室があります。
・松琴亭
松琴亭は、池をはさんだ古書院の対岸に位置しており、回遊式庭園が一望できるように設計されています。中央部に中庭を設けてロの字形に、広さ11畳の「一の間」、6畳の「二の間」、「膳組所」、北側の「次の間」、その東側の「勝手の間」、土間をはさんで板敷の間「西板敷」、「東板敷」、「水屋の間」などが配置されています。
・賞花亭
賞花亭は小高い島の上にある皮付柱をもちいた間口2間の素朴な茶屋です。「峠の茶屋」とよばれています。賞花亭はもと今出川の八条宮本邸にあった「龍田屋」という茶室を移築したものです。
・笑意軒
笑意軒は夏でも涼しく過ごせるように、水上を吹き抜けてきた涼しい風が茶室を通り抜けるように設計されています。
笑意軒は、大きな開口部を設けているところが特徴で、公家住宅特有の建物内部から外を眺めるための建物「物見」の要素を備えています。
・月波桜
月波桜は、池に張り出すようにして設けられた「月見台」の北東側にある、お月見を楽しむためのお茶室です。池に写る月を眺めながら優雅な時間が過ごせるように設計されています。
■桂離宮の「桂垣」について
桂離宮は1615 年(元和元年)頃に造営がはじまり、以来400年以上にわたって一度も火災や水害にあっていません。創建当時そのままの姿を現在に伝えている貴重な文化財です。
最近も桂川の増水がニュースになりましたが、桂離宮の横を流れる桂川は氾濫の多い川として古来より恐れられてきました。大雨のニュースを聞くたびに桂離宮は大丈夫だろうか?と、だれもが心配になるはずです。
歴史をひもといてみると、昔から桂川は氾濫をくりかえしており、過去には、1674 年(延宝二年)と1716 年(享保元年)、1721 年(享保六年)、1789 年(寛政元年)、1846 年(弘化三年)、1852 年(嘉永五年)、1903 年(明治三十六年)の合計7回、大きな水害が発生しています。しかし桂離宮が被害を受けた形跡は認められませんでした。
度重なる水害から桂離宮を守ってきたのは、生きた竹をそのまま使用した特殊な垣根だといわれています。
この垣根は「桂垣」とよばれ、耐水性の強い淡竹を生きたまま折り曲げて垣根に編みこんでいます。「桂垣」沿いには一定間隔で頑丈なケヤキが植えられ、堤防を越えて襲いかかる濁流から桂離宮を守ってきたと考えられています。
■桂離宮の参観方法
桂離宮を参観するにはインターネット予約と往復はがき、京都事務所参観窓口などで予約してください。
インターネット予約と往復はがきはすぐに定員に達するので、確実に見学したい方は、京都事務所参観窓口での予約がおすすめです。
京都事務所参観窓口は、京都御所清所門のすぐ西側にあります。
インターネット予約:京都事務所参観窓口
京都事務所参観窓口:〒602-8611 京都市上京区京都御苑3番 TEL (075) 211-1215
・アクセス
阪急京都線桂駅から徒歩20分
・参観開始時間(所要時間約1時間・1日6回)
午前9時・午前10時・午前11時
午後1時30分・午後2時30分・午後3時30分
まとめ
今回は、世界に誇る名建築と回遊式の庭園を備えた桂離宮のお茶室をご紹介しました。一度は見ておこうと思いながら、なかなか見る機会に恵まれないという方が多いはず。美しいお茶室や庭園に触れる経験は人生を豊かにします。昔の宮廷人の優雅な暮らしに思いをはせてみましょう。桂離宮をずっと水害から守ってきた「桂垣」もぜひ見ておきたい歴史的な建造物の一つ。じっくり観察して古人の知恵と技術を現代に活かしたいものです。