はじめに
名茶室を見に行こう!シリーズ。今回は松江藩中興の祖であり茶人としても高く評価されている、松平不昧公ゆかりの茶室「明々庵」と「菅田菴」をご紹介します。松平不昧は庶民から風流人、または道楽殿様と呼ばれていました。破綻した松江藩の財政立て直しを行った優れたリーダーでもあります。財政改革に成功し豊かなになった松江藩を幕府は警戒していました。不昧公は風流人を装うことで幕府の監視を逃れようとしていたのではないかといわれています。
■不昧公ゆかりの茶室「明々庵」「菅田菴」
松江藩7代藩主、松平治郷は、茶道と禅を極めた風流人として知られています。号を不昧とし、茶人として一流であったことから不昧公の名が広く浸透しています。
不昧公は、石州流の茶道を学んだのち、みずから不昧流という流派を立ち上げました。茶器に関する研究者としても優れていて「古今名物類従」や「瀬戸陶器濫觴」など、茶器に関する著作を残しています。
不昧公によってつくられた茶室には「明々庵」や「菅田菴」(国の重要文化財)などがあり、いずれのお茶室も民間に公開されているので見学できます(菅田菴は予約が必要)。
不昧公は、茶の湯につきものの和菓子の考案にも力を入れ、松江城下には不昧公ゆかりの銘菓が現在まで受け継がれています。
・明々庵
明々庵は1779年(安永8年)、不昧公によって松江藩家老有沢弌善の屋敷内に建てられた茶室です。明々庵は、東京や原宿、四谷などを点々としたのち、昭和3年に松江市に帰ってきました。戦争中は維持管理が滞り荒廃を極めていましたが、昭和41年、不昧公没後150年の記念事業で現在の赤山に修復されて移築しました。
開館時間:9:15~17:00(入館は16:30まで、季節変動あり)
年中無休
所在地:〒690-0888 島根県松江市北堀町278
・菅田菴(国の重要文化財)
菅田菴も、不昧公によって1792年(寛政4年)頃、松江藩家老有沢弌善の山荘内につくられました。入母屋造茅葺きの屋根を持つ茶室で、間取りは1畳台目中板入りという狭小な空間です。手前座と客座の間に幅1尺4寸の中板をはさみ、にじり口の上を幅広の連子窓にして光を取り入れており、狭さを感じさせない開放感があります。
開園時間:10:00~16:00 要予約(入場は15:45まで)
休園日:木曜
所在地:〒690-0824 島根県松江市菅田町106
■不昧公好みの和菓子「山川」と「若草」
不昧公が考案した和菓子の代表的なものに「山川」や「若草」があります。
・山川
江戸時代に不昧公が考案したとされる和菓子で、残されていたレシピをもとに大正時代に風流堂が復刻させました。
落雁の一種で、紅白一対になっています。赤は紅葉、白はせせらぎを表しています。
新潟県長岡市、大和屋の「越乃雪」、石川県金沢市、森八の「長生殿」とならぶ日本三大銘菓の一つに数えられています。
・若草
若草も江戸時代に不昧公が考案した和菓子で、主に春のお茶席で用いられました。明治時代中期に彩雲堂によって復刻が実現。
奥出雲産の上質なもち米を石臼で水挽きしてつくった求肥に、若草色のそぼろをまぶして、若草山を表現しています。
まとめ
不昧公ゆかりのお茶室「明々庵」と「菅田菴」をご紹介しました。「明々庵」では同じ敷地にある「百草亭」で抹茶がいただけます。松江城が一望できるビューポイントになっています。不昧公が考案した和菓子「山川」と「若草」もぜひ味わってみましょう。お取り寄せも可能です。