【チョッパーの生みの親】ラリー・グラハムってどんな人?

泉水ちか
2022.05.30

ラリー・グラハム(Larry Graham)は、アメリカ合衆国テキサス州生まれ、カリフォルニア州育ちのミュージシャンです。スラップ奏法、いわゆるチョッパーベーシストの生みの親としてよく知られており、またボーカリストとしても多くのヒット曲を出しています。ちなみに、俳優・ラッパーのドレイクが甥に当たることでも有名です。

略歴

ラリー・グラハムは、1946年8月14日アメリカテキサス州ビューモントで生まれました。父親がギタリスト、母親がシンガーという音楽一家で育ち、幼い頃からピアノやギターなど様々な楽器やダンスを学び始めたようです。15歳の頃に母親たちとバンドを組み、当初はギターとオルガンのフットペダルを担当していました。ある時フットペダルが壊れてしまい、他の楽器で低音を演奏しなければならなくなったため、ベースに転向します。

その後、ドラマーが脱退してしまい、ベースのラリーとボーカル兼鍵盤の母親だけのバンドになってしまいます。そこでラリーは苦肉の策として、ベースの低音弦を親指で叩くことによってバスドラムを、高音弦を人差し指で弾くことによってスネアのバックビートをそれぞれ再現するようになりました。これが「スラップ奏法」の原点です。グラハム自身はスラップ奏法のことを“Thumping & Plucking”やスラップ、チョッパーと呼んでいるようです。

ラリーは10代からラジオの熱心なリスナーで、特にシルヴェスター・スチュアートというDJの番組を気に入っていました。このDJはスライ・ストーンの名でミュージシャンとしての活動も行っており、兄弟らを中心にして「スライ&ザ・ファミリー・ストーン」というバンドを結成します。知人からの噂でラリーのライブを観に来たスライはラリーをバンドへ勧誘。ラリーもこれを快諾して加入することとなります。ラリーが1967年に加入したスライ&ザ・ファミリー・ストーンはご存知の通り、1960年代後半にヒットを連発。バンドの人気に伴い、ラリーの知名度も上昇することとなりました。特に、ラリーのスラッピングによるファンク・サウンドはドラムのグレッグ・エリコとのコンビネーションによって完成し、世間に知れ渡ります。

バンドを脱退後は、1973年に自身のバンド、グラハム・セントラル・ステーションを結成。1980年に解散した後はソロミュージシャンとしての活動を開始し、1980年にはファーストソロアルバム「One in a Million You(バラードの世界)」をリリースします。この作品はラリーのベーシストとしての側面よりもボーカリストとしての側面を強く押し出しており、とくにタイトル曲となったバラード「One in a Million You」は全米チャートトップ10入りのヒットとなり、バラードシンガーとしてのラリーの名を広く知らしめました。

これ以降は、ベーシストとしてよりもボーカリストとしての側面を強く押し出した活動を行います。ピーボ・ブライソンやアル・ウィルソンのような洗練されたポップソウル・ヴォーカルスタイルで人気を博しました。1985年の「Fired Up」まで計5枚のアルバムをリリースしますが、これを最後に音楽活動の休止に入ります。

1992年、ファミリー・ストーンのメンバーを呼んでグラハム・セントラル・ステーションを再結成。同年には来日公演も行っています。また、1998年ごろからはプリンスとのツアーなどでも活躍しました。アメリカの自宅がプリンスの家の隣だった時期もあるなど、親交が深まっていったようです。

ラリー・グラハムのベース

ラリー・グラハムは、スライ&ザ・ファミリーストーンや再結成以前のグラハム・セントラル・ステーションの時期において、主にフェンダーのジャズベースを愛用していました。90年代に入ってからは、日本のギターメーカー「ムーン」が制作した彼のシグネチャーモデルを使い続けています。このラリー・グラハムシグネチャーモデルの最大の特徴は、ボディやヘッドだけでなく指板までホワイト、金属パーツにはゴールドが使われている点でしょう。2色のシンプルさが逆に特徴的です。また、ボディにマイクが取り付けられているのもこのモデル独自の仕様となっています。ワイヤレスシステムとマイクロフォン用のトランスミッターが装備されているため、ベースを弾きながらボーカルを披露することが可能です。

日本とのつながり

ラリー・グラハムはよく来日するアーティストでもあり、これまで東京ビルボードなど複数の会場で公演を行っています。また、前述のように日本のギターメーカー「ムーン」とのつながりもあります。

意外なところでは、KinKi Kidsのメンバーである堂本 剛が2005年冬に始動させたプロジェクトENDLICHERI☆ENDLICHERI の2ndアルバム『Neo Africa Rainbow Ax』(ネオ・アフリカ・レインボー・アックス)に入っているインスト曲「ENDLICHERI☆ENDLICHERI 2」にラリー・グラハムがベースとゲストボーカルで参加したことも話題になりました。

まとめ

日本との深いつながりもあるラリー・グラハム。来日の際には、またぜひその華麗なベースプレイを見せてもらいたいものですね。

『Raise Up』
ラリー・グラハム/グラハム・セントラル・ステーション

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泉水ちか
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