このシリーズでは、現在活動している日本人ジャズミュージシャンを中心に、彼らがリリースしたアルバムを紹介していきます。
第1回は、堀秀彰さん(pf)、馬場孝喜さん(g)のユニット「DUO TREMOLO(デュオ トレモロ)」が
今年2019年3月20日にリリースしたアルバム『RESONANCE』です。
精力的に活動する中堅世代
堀さんは今年41歳、馬場さんもほぼ同年代という、所謂中堅どころです。お二人とも30代の時点で既に名手の呼び声が高い方々。
高い技術力、甘すぎない情緒性、あちこちに散りばめられた遊び心が、聴く者の心をくすぐります。
『RESONANCE』収録曲
01. Dear Ruth
02. Choro de Tremolo
03. Friday night at the Cadillac club
04. Winter waltz
05. Be-bop, Ba-bop
06. Harvie’s Tune
07. All the things you are
08. J.M.
09. The loveliness of tone
10. Look up into the sky
11. Pedra bonita
堀秀彰(piano, voice & percussion on 11)
馬場孝喜(guitar,voice on 11)
ゲストミュージシャン
仙道さおり(percussion on 3,8)
黒沢綾(voice 11)
アルバム解説
このアルバムは、彼らのオリジナル曲と、ちょっと面白い選曲で構成されています。初心者でも知っているような超有名スタンダードは、7曲目くらいではないでしょうか。全部で11曲が収録されており、ジャズアルバムとしては比較的多い方かと思います。
筆者はこの作品を通しで聴いた際、とても不思議な感覚に包まれました。
今までに体験したことのない、濃密な夜空に浮遊するようなイメージです。暗闇に放たれる森の香りやクチナシの芳香が微かに漂う空気の中で、漂いながら満天の星を眺めるような心地良さ。ふと下方を見ると、街のネオンが煌めいている様子も見て取れたり。
まずは1950年代後半から活躍した、アメリカのジャズピアニスト:シダー・ウォルトン作曲の「Dear Ruth」から。ウォルトンの演奏よりややテンポが速めで、軽やかかつ瀟洒な雰囲気を前面に出した仕上がり。この瀟洒な感じはラストの曲まで一貫しています。
Choro(ショーロ)とは、19世紀にブラジル・リオデジャネイロで成立したポピュラー音楽のひとつで、ジャズよりも歴史が古い、即興性の強いジャンルです。
堀さんの小粋なピアノは、秘めた情熱を凝縮させて作った音の粒を厳選し解き放っているよう。
馬場さんのギターの音色は温かみがあるのですが、紡ぎだすフレーズはこの上なくクール。
お二人の音が合わさり絡み合い、刺激的な化学反応を起こしている様子が感じ取れることでしょう。
ジャズのスタンダードを十二分に知り尽くしたお二人が、新たな世界を築き上げ提示したこの作品は、季節や場所を問わず、いつどこで聴いても心和ませてくれること請け合いです。
『RESONANCE』 プロモーションビデオ
3曲目「Friday night at the Cadillac club」のレコーディング風景を収めたプロモーションビデオが公開されていますので、ご覧ください。
この曲には、ゲストミュージシャンの仙道さおりさんによるパーカッション演奏が入っています。ちょっとワルな感じのする、ゴキゲンなチューンに仕上がっていますね。
作曲者の ボブ・バーグは1951年生まれのサックス奏者で、事故により51歳の若さでこの世を去ったミュージシャン。
1990年に斑尾高原で行われた『ニューポート・ジャズフェスティバル・イン・斑尾』でバーグが演奏した際の動画がYouTube にあります。当時のバーグと現在同年代の「DUO TREMOLO 」が彼の音楽をどのように受け止め、自分たちなりに表現したかを確認する意味でも、一聴の価値ありですよ。ジャズというよりバリバリのフュージョン、ちょいワルというより凄くワルい感じがします(笑)
「DUO TREMOLO」は、この3月~5月にかけてアルバム発売記念ライブを全国各地で展開しました。その後もコンスタントにライブは開催されており、既に10月までのスケジュールが決まりつつあります。是非一度足を運んでみてくださいね。
お二人のサイトにそれぞれスケジュールがアップされていますので、そちらをご紹介しておきます。